JAGDA JAGDA

JP / EN
PUBLICATIONS

ヒロシマ・アピールズ 1989

1989.8.6
ヒロシマ・アピールズ 1989
デザイン:勝井三雄 タイトル:「ヒロシマの天空」

More Details in English

 

制作コメント

“生あるものは必ず滅びる”平和を呼びおこすものは、何を差し置いても“生きる喜び”である。肉体を持った“生”こそ、それに相応しい。
ある日、偶然、堀口守氏の跳躍する黒人ヌード「1/8」と題する写真に出会った。その写真の中の黒々とした弾む肉体に、吸い寄せられるような鋭い緊張感をおぼえた。その不思議な黒い影は、1ケ月たっても消え去るどころか、更に強く私を捕らえてはなさない日々が続いた。そうしたある日、ヴィム・ヴェンダース監督作品『ベルリン・天使の詩』を観る。天使が地上の女性に恋をして、地上に生還したその瞬間、私の脳裏から離れなかった黒い肉体と翼が結びついた。この映画のドイツ語原題は“DER HIMMEL ÜBER BERLIN”(ベルリン天空)であった。「天空」という言葉は、私にとって「空」より数段も魅かれる言葉である。この1989年の12月は、米ソ対立の証であったベルリンが解放された年であった。
人は皆、生きている間、心の動きと共に必ず空を見上げることであろう。そしてその向こうにある遥かなる天空を覗こうとする。これは確かに生きている時の、極めて抽象化された“証”かもしれない。私は、ヒロシマの天空を想い、その心証をポスターの中で蘇らせることにしたのである。
制作中にふと気がつくと、逆さまに作品をみていた。するとこの肉体は、天空より真下に奈落の底まで落ちていく姿に変わった。そこで「あなたは天と地、どちらをえらびますか」とコピーを入れ、上下のどちらからでも読める2つの「1989*HIROSHIMA APPEALS」を記した。
このポスターを手にする十人に一人でも、天を地に、地を天にする人がいるならば、私は人類の英知と勇気を確信する。
このポスターは、本来この一人の人のためのものである。

「ヒロシマ・アピールズ」ポスターとは

公益社団法人日本グラフィクデザイナー協会(JAGDA)と財団法人広島国際文化財団が1983年、言葉を超えて「ヒロシマの心」を訴えるポスターを共同制作、内外に平和を呼びかけるキャンペーンの構想を発表。同年に第1回作品として、当時JAGDA会長だった故亀倉雄策氏の「燃え落ちる蝶」が発表され、その後8年間、毎年1点ずつ新しいポスターが制作されました。

サイズ:B1(728 x 1,030 mm)