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ヒロシマ・アピールズ 1990

1990.8.6
ヒロシマ・アピールズ 1990
デザイン:石岡瑛子 タイトル:「X像の沈黙」 *Authorized by Walt Disney Company, the original copyright owner of the Character

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制作コメント

情報テクノロジーが急速に発達し、世界中のニュースがひといきでとりこめるようになった現在、ポスターという伝達手段で広島の悲劇をうったえかけ、P. E. A. C. E. を語ることはきわめて難しくなってきている。今日のように地球を丸ごと読みとることなどとても考えられなかったイノセントな時代においては、ポスターにもそれなりの説得力があった。すでにプリミティブな伝達手段になりつつあるポスターに、はたして強烈な輝きをとりもどすことが出来うるだろうか。ワールドワイドに使用されるポスターであるからには、地球の隅々まで覚醒させるボルテージがなくてはならない。地球を住処とする私たち大衆のひとりひとりが、しっかりとした行動を起こしさえすれば不可能な問題も可能になる。私は今日のマジョリティ人間を象徴するシンボル像を描くことによって、ポスターとそれを見る者との間に緊張関係を創りだそうと考えた。そのシンボル像を、私はここで仮にX像と呼ぶことにする。X像はX氏でもあり、X嬢をも表しているし、X君のようでもある。ミッキー・マウスにインスパイアされたわがX像はふだんはだらしなく大口を開け、落着きのない大きな目で焦点の定まらない方向を見ながら、無意味な愛想をふりまいている。しかし、今回「1990 HIROSHIMA APPEALS」に一役買うことになったX像は、両手でしっかりと目を覆い、口を固く結んで強い意志表示をしながら、ふたつの意味を演じることになった。ひとつは「HIROSHIMAの悲劇を2度と見たくない」という人類最大の悲劇再来へのwarningであり、もうひとつは、その裏側の「HIROSHIMAの悲劇に目をつむるのは人間にとって最も重い罪悪である」という見ないようにする行為への警告である。1990年のポスターは、20世紀最後のディケードの出発にふさわしい姿をしていなくてはならない。イラストレーター、チャーリー・ホワイト3世が、私の頭の中にしっかりとおさまっているX像を鮮明に描写してくれた。文学的、アート的な情感を出来るだけ取りのぞき必要なメッセージだけをドライに切りとって伝えようと試みた。
「暑い陽ざしの中で貴重な沈黙を語りかける真面目なX像の登場」がこのポスターへの答である。国を越え、人種を越え、年齢や性別をも越えてHIROSHIMAの悲劇についての考察をうながすことが出来れば成功である。

「ヒロシマ・アピールズ」ポスターとは

公益社団法人日本グラフィクデザイナー協会(JAGDA)と財団法人広島国際文化財団が1983年、言葉を超えて「ヒロシマの心」を訴えるポスターを共同制作、内外に平和を呼びかけるキャンペーンの構想を発表。同年に第1回作品として、当時JAGDA会長だった故亀倉雄策氏の「燃え落ちる蝶」が発表され、その後8年間、毎年1点ずつ新しいポスターが制作されました。

サイズ:B1(728 x 1,030 mm)