JAGDA新人賞2010:展覧会情報・選考経緯
受賞者 :木住野彰悟・長嶋りかこ・八木秀人 /以上3名(50音順)
作品発表:年鑑『Graphic Design in Japan 2010』(2010年6月発行予定/六耀社刊/予価15,750円)
授賞式:2010年6月5日(土)札幌・札幌ファクトリーホール〈2010年度JAGDA通常総会会場にて〉
展覧会 :JAGDA新人賞受賞作家作品展2010
2010年5月31日(月)〜7月2日(金) 東京・クリエイションギャラリーG8
2010年7月12日(月)〜22日(木) 大阪・平和紙業ペーパーボイス
2010年7月26日(月)〜8月1日(日) 滋賀・成安造形大学 ギャラリーアートサイト
2010年9月23日(木)〜10月3日(日) 愛知・国際デザインセンター デザインギャラリー
2010年10月23日(土)〜31日(日) 新潟・新潟県立近代美術館
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選考経緯
・年鑑『Graphic Design in Japan 2010』に出品した、新人賞対象者211名(2009年10月31日付で39歳以下のJAGDA会員)のうち、各カテゴリー選考(10票満票)において「8票以上得票の作品が1作」または「6票以上得票の作品が2作以上」の条件にかなう出品者32名をノミネートとした(注:入選ボーダー票数がカテゴリーによって違うため、出品数の最も多いポスターを基準カテゴリーとし、各得票スコアをコンピュータで補正したスコアを使用)。
・ノミネート会員は次の通り。
相澤千晶・池澤 樹・上村 昌・後 智仁・内田真弓・小栗卓巳・小野勇介・カイシトモヤ・鎌田順也・木住野彰悟・喜多昭夫・久能真理・サイトヲヒデユキ・志賀玲子・杉山陽平・関 翔吾・大黒大悟・高田 唯・高谷 廉・竹林一茂・竹村真太郎・玉置太一・長澤昌彦・長嶋りかこ・樋口賢太郎・藤井 圭・三浦 遊・宮内賢治・宮田裕美詠・宮脇 亮・八木秀人・八木義博(以上32名/50音順)
・ノミネート会員の全入選作品を会員ごとにまとめ、一般グラフィック選考委員20名がひとり5票までの投票権を持って、用紙記入方式で1次投票を行った(出品会員氏名は非表示)。その結果、4票以上を取った上位11名(池澤・小野・鎌田・木住野・久能・大黒・高田・長嶋・樋口・三浦・八木秀人)を最終候補とすることで意見が一致した。
・11名を候補に、ひとり3票までの投票権を持って、用紙記入方式で投票を行った。その結果、得票7票が2名、6票が2名、5票が3名、4票が3名、0票が1名という結果となり、ここで決定方法について、選考委員から様々な意見が出された。最終的に11名全員を候補として、選考委員ごとにそれぞれ1位~3位の順に出品者番号を記入し(選考委員全員が3名を選出することが条件)、1位=3ポイント、2位=2ポイント、3位=1ポイントの計算で投票を行うことに多数決で決定した。
・最終投票の結果、得票上位の八木氏(18ポイント)、長嶋氏(17ポイント)、木住野氏(16ポイント)の3名を新人賞とすることを決定した。
・年鑑選考会全体の情報はこちら
新人賞総評(記/永井裕明2010年鑑編集長)
今年は選考システムの改訂がなされ、その影響からか、各カテゴリー選考を経て、新人賞選考の場にノミネートされた人数は、例年よりかなり多い32名となった。いずれの候補者も高いレベルの力に達してはいたが、全体的に作品の傾向は似ており、個性が際立つようなものが少なかったことは否めない。受賞した3名の作品には、新人賞の定義である「今後の活躍が期待される」という可能性がしっかりと感じられたことが受賞につながったのではないだろうか。
[八木秀人]
受賞対象となった作品は、カッターワークによるものと、鉛筆の細密画によるものの、大きく2つに分けられる。どちらも手法自体は既視感があり、新鮮さはないが、むしろ「よくある手法」を逆手に取り、それぞれに、徹底した作り込みと高いプレゼンテーション力によって、クライアントの要望に対して、誠実に回答を行っている。最終選考で、総得票数が最も多かったのもその表れであろう。今後もその姿勢は崩さずに、より自分なりの表現を模索していくことが望まれる。
[長嶋りかこ]
ファッションブランドの一連の仕事からは、一貫した趣味性を感じられる。また、プロモーション映像や屋外広告などのマス媒体における仕事から個人会社の小型のグラフィックに至るまで、仕事規模の大小を問わず、的確なデザインを施している。新人賞ノミネート者の中では入選作品数が最も多く、まだ荒削りな部分もあるが、総合的な安定した力が感じられる。明快でパワフルなデザインに、今後、繊細なディティールが加わっていけば、より魅力ある作品が生まれるのではないだろうか。
[木住野彰悟]
入選作品は、すべて展覧会に出品された自主制作のものであり、クライアントワークが対象に含まれていないという指摘もあったが、最終的に受賞となったのは、グラフィックと物性のバランスの良い造形表現の魅力であろう。最終選考で、評価する委員の数が最も多かった(総得票数では3位)ことからも、それは伺える。糸を使う表現自体は目新しいものではないが、手法のみに陥らない全体としての存在感があった。ポップアート的な表現を持ち味にして、実際的な仕事への展開にも期待したい。