JAGDA会長就任のご挨拶(佐藤 卓)
公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)
会長就任のご挨拶
JAGDA会長 佐藤 卓
この度、JAGDA会長に就任させていただきました佐藤卓より、ご挨拶をさせていただきます。
私は今まで様々な仕事に携わってきましたが、グラフィックデザイナーという肩書きは一度も変えたことがありません。それは、グラフィックデザイナーであることを誇りに思っているからです。グラフィックデザインを取り巻く世界は、産業革命、技術革命、情報革命などにより、今までも大きく変容してきましたし、AIの積極的な導入などを想定すると、今後も大きく変わり続けることでしょう。そして、仕事自体は、様々なことを統合的に捉えて、グラフィックデザインの領域を超えて対処する力量が、今後より必要になることは容易に想像できます。それでもなお私は、グラフィックデザイナーという肩書きを変えるつもりはありません。それはなぜか。グラフィックデザインとは、全てのことを繋ぐことができる特殊な技能だからです。世の中がどんなに変化しようとも、それぞれの関係は、人が適切に繋がなければいけません。そこにコミュニケーションデザインは必ず必要です。デザインと関わりがない物事は何一つないということに気づけると、私達グラフィックデザイナーがやるべきことは、どんな時代にも無限にあると言って過言ではありません。そしてグラフィックデザイナーは、文字や紙質の選定など、環境に対する解像度が圧倒的に細かい。その力量は、数字には出ない微細な感覚に宿ります。現在まだまだ発展途上のネット環境で鈍らせてしまう、人間が本来持ち合わせている優れたセンサーを、この繊細な神経により覚醒させることができるのです。この技能は、地球という奇跡の惑星で、私達生き物に育まれた感覚を覚醒させるために、今後益々必要とされることでしょう。政治、経済、医療、福祉、教育、科学、テクノロジー、芸術など、全ての分野を繋ぐことができるのも、グラフィックデザインのポテンシャルだと思っています。
グラフィックデザインで培われた技能には、目に見える「表現」にとどまらず、社会の見えない仕組みや構造をも美しくできる可能性すら秘めています。そして、今後は行政や国に対しても、今まで以上に積極的な姿勢で、グラフィックデザイン環境の整備と理解を求めていきたいと思っています。それは、個人ではない公益社団法人だからこそできることでもあります。今後、皆さんと一緒に、今まで以上に大きなスケールで、グラフィックデザインの効能を社会に示していけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。